原稿はとにかく勢いで一気に書き上げる
次はいよいよ、原稿を書いていきます。
ここまであなたはしっかり原稿を書くための準備をしてきました。
出版の目的を再確認し、企画のコンセプトを見直し、丁寧に階層づくりも行ってきたはず。
ですから、ここまでこれたあなたなら、すんなりと原稿を書き進めることができるはずです。
書籍の原稿は、たった1日で出来上がるようなものではありません。
何日かに分けて、少しずつ積み上げていくものだということはすでにお伝えしたとおりです。
書籍の原稿執筆は、長距離走のようなもの。
勢いよくスタートしたところで、中盤で疲れ切ってしまいますし、残りを書ききる体力も無くなってしまいます。
また、ひとつひとつの表現を吟味しながら書いていると、いつまでたっても終わりません。
なかなか終わりが見えないので、やはり疲れてしまって期日までに終わらせられないのです。
とくに書籍の原稿を執筆するときは、ペース配分を間違えてダウンしないよう、まずはゴールを目指して一気に書くことが大事です。
途中で気になる表現があっても、一旦は無視してもらって構いません。
気になるところはメモをするなど後から思い出せるようにしておき、とにかく最後まで走りきってください。
表現をどうするか、あるいはこの事実の整合性は? といった確認は、後からいくらでもできます。
毎日◯文字ずつ書こうと決める人もいますが、私はあまりオススメしません。
なぜなら、日によって、人の体調はさまざまですし、急な予定があるなど、なかなか同じペースで執筆を進めることは困難なことが多いからです。
それから、執筆する上での著者としてのスタンスは決めておいてください。
言い回しや文体などが揃っていないと格好悪いですし、自分のことを「私」と書いたり「自分」と書いたりなど、統一されていないと読者を混乱させることになります。
用語統一に関しては、別紙に控えておいて、執筆する際にパソコンの側に置いておくと便利です。
原稿執筆に取り掛かる前に確認しておくべきこと
書けるときには一気に書くことをすすめますが、それでも1週間以上はかかるはずです。
私たちのようなプロであっても、書籍原稿を1週間で書ききるのは大変だと感じます。
それが皆さんのような、書き慣れない人であれば、時間がかかって当然です。
でも、あなたが何日もかけて1冊の書籍原稿を書いたということは読者にとっては関係のない話。
読者は1冊の書籍として出来上がったそのものを手にして読むわけですから、当然最初から最後まで同じスタンスで書かれていないといけないわけです。
途中で主張が変わっていたりすると、そこで読者は読むのをやめてしまいます。
せっかく書いたものが最後まで読んでもらえないなんて、それほど悲しいことはありません。
読者にきちんと最後まで読んでもらえるようにするため、書き始める前には「はじめに」を読むようにしてみてください。
「はじめに」には、その書籍で伝えるべき内容あるいはあなたが読者に向けた熱い思いが書かれています。
「そうだ、こういう気持ちだったんだ」と思い起こすツールとして、「はじめに」を活用しましょう。
他には、あなたの身近にいる誰かひとりをあなたの書籍の読者として想定して書き進めると、わかりやすい文章が書けます。
文章力について心配される人もいますが、普通の著者に高い文章力は求められていません。
何も文学作品のようなものを書く必要はないのです。
とくに実用書であれば、文章力よりも求められるのは、わかりやすさ。
ですから、学校で習った基本的な作文技術があれば大丈夫です。
気になるところや、直した方がよいところは編集者がチェックしてくれます。
中学二年生が分かるように書くぐらいが丁度いい
実用書の原稿に、文学的な文章力は求めていませんと言いました。
既にお伝えしたように、実用書に求められているのはわかりやすさですから、できるだけ読者がつまずいてしまうような表現は避け、わかりやすい表現を心がけて欲しいのです。
どのくらいわかりやすく書けばいいのか。
目安としては、中学2年生が理解できるような文章であればいいと言われます。
中には、大人よりも博識で難しい言葉を使う中学生もいますが、あくまでも一般的な中学2年生をイメージしてください。
書く際のポイントは、次の3つです。
難しい単語は使わないこと
難しい単語やみんなが読めない漢字は避けて、できるだけ平易な表現を心がけてください。
それから、専門用語や隠語、略語なども使わないようにします。
専門書の場合は、対象者がそのテーマをある程度知っている人ですから、専門用語を使って解説しなければならないこともあるでしょう。
ですが実用書の読者は一般の人たち。
それも場合によっては、そのテーマの初心者であることもあります。
どうしても専門用語を使わなければなならない場合は、本文中できちんと解説するなどして、とにかく読者を悩ませないようにします。
短文構成でテンポよく書く
一文はできるだけ短くし、テンポよく読めるかどうかも大事です。
一文をとても長く書いてしまう人がときどきいますが、とても読みにくいです。
読んでいる方が読みにくいだけでなく、書いている本人も途中でよくわからなくなってしまうこともあります。
テンポよく読み進められる方が読者にとって負担が少ないですから、最後まで読んでもらいやすくなります。
文末の繰り返しに注意する
文末も、毎回同じにならないように注意しましょう。
ある文章の終わり方が「〜ます。」と終えられていたとします。
次の文章も、その次の文章も同じように「〜ます。」と続いていると、稚拙な印象を与えてしまいます。
文章力は求められていないとはいえ、多少の工夫はあっても良いでしょう。
同じ文末が繰り返されると、読者は飽きてしまいますし、著者としての見られ方にも影響します。
稚拙な文章を書く著者が、自分の悩みを救ってくれるとは思えない……。
そんな風に思われてしまったら、せっかく出版してもあなたのビジネスは加速しないのです。
読者を悩ます要素はなるべく排除する
1冊分の文章を最後まで飽きさせずに読み切ってもらうことは、本当に難しいことです。
でも、とにかく読者には最後まで読み切ってもらわなければなりません。
もしも途中で挫折してしまったら、「この人の書いた本は、何が書いてあるのかよくわからない」とか「いいと思ったけれど、途中でやめてしまいました」なんていうレビューがAmazonについてしまうかもしれません。
実際にレビューされるかどうかは別として、最後のページまできちんと読んでもらうのに大切なことは、読者を悩ませないこと。
これに尽きます。
途中で悩ませ「わからない」と感じさせてしまったら、読者はすぐに書籍を閉じてしまいます。
一度「わからない」と閉じられてしまった書籍が開かれることは二度とありません。
わからなかったのですから、当然ですよね。
ですから、読者を悩ます要素は極力排除するようにしてください。
あなたが執筆するのは実用書ですから、何かの解説をすることもあるでしょう。
解説をする中で、何かを選ばないといけない時は、あなたが決めてしまってください。
AとBの商品がある場合、どちらでも大丈夫ですなどと言わず、「Aを使ってください」と言い切ることが大事です。
AとBを比較して紹介することもありますが、それでも最終的にはどちらかを選択しないと、読者は迷ってしまいます。
ただ、複数の選択肢を提示して、その中の1つを選ばせる場合は、必ずその選択の理由も伝えるようにしないと、「なぜそれにするの?」とまた読者に疑問を与えてしまいます。
疑問を与えないという意味では、作業手順を省くこともやめましょう。
あなたは少なくとも著者になれるくらいですから、そのテーマにおいては専門的な知識を持っていると思います。
人はある程度知識がつくと、初心者だった頃の気持ちを忘れてしまいがち。
そうしたことから、「このくらいはわかるだろう」と作業手順を省いて説明してしまうのです。
「ググればわかる」という考えは、書籍では通用しません。
実用書は、「読んでわかる・できる」ことが大事なのですから、読者にググらせてはいけないのです。
読者の手を止めないこと。
それを意識して原稿を執筆していきましょう。
内容に説得力を持たせる文章を書くコツ
読者に疑問を持たせないためには、とことん「なんで?」をつぶしていく必要があります。
自分で書きながら、「なんで?」「どうして?」と1人ツッコミを入れるくらいで丁度良いです。
1人ツッコミをすることで、読者が疑問に思うだろう箇所がわかるようになりますし、その箇所を丁寧に説明するように心がければ、スッと読者の心に入っていく文章が出来上がります。
人が「なんで?」「どうして?」と疑問を抱く時は大抵、主張に対しその理由や根拠が示されていない時です。
あなたがいくら「これが必要です!」と言ったとしても、なぜ必要なのかを示さなければ、読者はどう思うでしょうか? 読者からしたら、押しつけ以外の何ものでもありません。
ですから、説得力のある文章を書くには必ずその理由や根拠を添えるようにしてください。
理由や根拠を示す時、著者の立場によって提示するものが変わります。
実用書における著者の立場には、専門家と実践者があるというのを覚えているでしょうか。
あなたがこの2つのうち、どちらの立場から書籍を出版するのかはわかりませんが、その立場にふさわしい説得の仕方というものがあります。
実践者として書く場合は、理由や根拠として自分の事例や実績、体験、経験を示すと良いでしょう。
「〜は〇〇です。
なぜなら、私は過去に▲▲ということがあったからです」といったイメージです。
一方、専門家として書く場合、理由や根拠には、関係省庁の公的資料や学術的資料を示すと、より専門家らしさが伝わります。
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