あなたのビジネスのベネフィットは?
出版する目的を再確認したら、次はベネフィットを考えてみましょう。
ベネフィットとは、「このビジネスに申し込めば、こうなれます」というもの。
「〇〇になれる」がベネフィットだとしたら、お客様になる人は〇〇になりたい人ということになります。
「〇〇になりたい」というのはまさに欲求ですし、そこに悩みも存在するはずです。
例えば、投資の方法を教えている人が、バックエンドとして講座を売りたいと考えたとしましょう。
投資の講座を受けることで得られるベネフィットは、「不労所得が手に入る」や「お金の心配が減る」などが考えられます。
人は、商品やサービスを購入する際、今よりもいい未来を手にしたいという思いが根底にあります。
先ほどの例でいうと、「不労所得が手に入る」や「お金の心配が減る」の他に「お金持ちになって、人から羨ましがられたい」とか「すごいと言われたい」といった未来を手にしたいと考えていることもあるでしょう。
ベネフィットを考えることができたら、そのベネフィットを享受したい人たちは、今現在どんな悩みを抱えているのかを考えてみてください。
「不労所得が手に入る」や「お金の心配が減る」というベネフィットから考えるとすると、このようなことを期待する人たちはおそらく、「現時点でお金に困っている」とか「金ができるほどの余裕がない」という悩みを抱えているでしょうし、他にも「今の仕事から解放されたい」とか「働きたくない」という欲求もありそうです。
ターゲットの悩みや欲求を客観視してみる
ベネフィットを考え、ターゲットの悩みや欲求には何があるのかを考えることができたら、今度はそれらを客観視してみます。
果たして、先ほどあなたが考えたことを求めているお客さんは、本当にいるのでしょうか。
いるとしたら、どのくらいいるのでしょうか。
そんな事を考えてみてください。
初版がすべて売れると仮定するなら、最低でも4000人以上の市場規模がないと難しいでしょう。
より具体的に数字を算出したいのであれば、関連省庁のサイトなどを参考にして数字を参考にするとわかることもあります。
「このビジネスなら、このくらいのお客さんはつくのではないか」という考えは、身につけて損はありません。
市場を見極めることは、ビジネスを成功させる上で欠かせない力なのです。
市場を見極める際に、ひとつ注意していただきたいことがあります。
それは何かというと、書籍を通して啓蒙活動はできないということです。
啓蒙活動とは、世の中に対して自分の考えを知らせようとすることです。
実用書は、ターゲット悩みや欲求に対して作られます。
ですから、読者が既に自覚している悩みについて書かれていなければ、書籍が売れることはありません。
読者が悩みや欲求を自覚し、しかもその悩みを解決したいと思っているかどうかが重要です。
しかも、その悩みを解決するために、向かう先が書店であることも忘れないでください。
さて、どのくらいの市場規模なのかを客観視してみて、万一、市場があまり大きくないことがわかったら、その市場を諦めるか、間接的な集客ができるかどうかを考えましょう。
通常は、きちんと市場のあるところへ商品を提供し集客していくという直接的集客を行います。
でも、市場規模が小さい場合は、いくら商品を提供したって売れるはずがありません。
ですから、お客さんを違う市場から自分のビジネスにつながる市場へと連れてくる必要があります。
それを、私は間接的集客と呼んでいます。
私は普段編集者として仕事をしていますが、その傍ら出版社と出版したい人をつなぐ出版プロデューサーの仕事もしています。
この出版プロデューサーの仕事におけるベネフィットは、ずばり商業出版できること。
「ビジネスを加速させるための出版が可能」というのがベネフィットになります。
でも、もし商業出版することでビジネスが加速することに気づいていない場合は、直接的集客することは無理ですから、間接的に集客することを考えなくてはなりません。
例えば、自分の持っているコンテンツを活かして起業する方法を伝え、その中で商業出版することでビジネスが加速することに気付かせてあげる、という感じです。
このように、顕在化しているニーズの市場規模が小さい場合は、似ているけれども違うカテゴリの市場から、お客さんを移管させる戦略を立ててみましょう。
顕在ニーズのさらに奥にある潜在ニーズを探る
ターゲットの悩みや欲求に、ある程度のニーズがあるかどうかを確認することが大事だということはおわかりいただけたと思います。
出版でビジネスを加速させるのであれば、まず書籍を購入してもらわなければ始まりません。
書籍を購入してもらうには、ターゲットがそもそも悩みや欲求に解決しようと考えている状態であることが必要条件です。
解決したい悩みでなければ、ターゲットはお金を払ってくれないからです。
こうしてニーズがわかり、そのニーズの市場もあることが確認できたら、早速その内容を企画書にしていきたいところです。
でも、あなたの立てた企画をより良いものにし、より売れる書籍にしていくために、企画をさらに磨いてみましょう。
例として、こんなことがあります。
口臭が気になるのをどうにかしたいという悩み・欲求を抱えているターゲットに対して書籍を作ろうとした時、普通だったらそのまま口臭予防の書籍を出してしまいがちです。
でも、口臭予防の書籍は既刊書も多いですし、普通に出版しても売れにくいです。
ですから、差別化を考える必要があります。
そこでヒントになるのが、ターゲットの潜在的なニーズを探る方法です。
潜在的なニーズとは、いわゆる「本音」です。
口臭を解決したいと思っている人の本音は、「今度予定されている彼女とのデートのためにどうにかしたい」というものかもしれません。
ですから、単に口臭予防の企画を考えるよりも、短期間で効くことを訴求するとか、異性と話すときに気にならないみたいなベネフィットを打ち出してみるなどの工夫をしてみてください。
そうすることで、類書との差別化ができるだけでなく、ターゲットが本当に欲しがっているものを提供できるようになります。
このように、既に市場にライバルがいる場合は、ターゲットの悩みや欲求を漠然と捉えるのではなく、より具体的に訴求することで買われやすい仕掛けを作ることができます。
一見するとこれは、市場を狭くする話ではありますが、ニーズを深める話でもあります。
ニーズを深めるとは、つまりターゲットがより強く求めているところへ訴求できるということです。
読者の悩みが強いものであればあるほど、それを解決すれば読者から感謝されます。
「あんなに悩んでいたのに、この本のおかげでよくなった」という感想が生まれれば、書籍や著者であるあなたの価値も高まるというわけです。
ターゲットを決めるときの落とし穴に注意
人のことはよくわかっても、自分のこととなると急にわからなくなるもの。
「あの人はこうすればうまくいくのに」と人に対して気づけることはあっても、いざ自分のことになると、どうすればうまくいくのか悩んでしまいがちです。
ビジネスをする上では、誰かに自分の商品を購入してもらう必要がありますが、その際に必ず「誰に売るのか」と、ターゲットを決めますよね。
ターゲットを決めるとき、みなさんがよく陥りがちなことがあります。
何によく陥っているかというと、自分が狙うべきターゲットを見誤ってしまうことです。
研修講師の人を例にして考えてみましょう。
普段、研修をしている人たちは、管理職や新入社員あるいは中堅社員向けなどさまざまな階層に向けて研修を行なっていますよね。
そういう人が、書籍の企画を立てる場合、ターゲットは一体誰にしたらいいと思いますか? 実は、研修講師の人がターゲットとして狙うべきなのは、社長など決裁権のある人物です。
ですから、研修講師の人は、社長もしくは決裁権のある人がどのような悩みや欲求を抱えているのかを考え、そこにリーチする解決策として書籍の企画を立てていく必要があります。
いつもの研修では、社員に向けてサービスを提供するので、ついつい社員向けの書籍を作ろうとしがちです。
でも、いくら社員の手元に書籍が渡ったところで、決済者があなたに仕事をオファーしなければあなたのビジネスは加速しません。
このように、商業出版を通してビジネスを加速させたい場合の企画は、普段提供している相手がターゲットになるとは限らないことを覚えておいてください。
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